「ぬり絵の魔力」 北九州版 高橋留美子展
福岡へ出張に出たついでに、小倉まで足を延ばして北九州市立美術館分館で開催されている「高橋留美子展」を見て来ました。

「高橋留美子展」は1年前、最初の銀座松屋での開催で見ているのですが、新連載の「境界のRINNE」のネーム展示が追加されていると聞いて、これは見に行かねば、と思っていたのです。追加された「境界のRINNE」の活き活きとしたネーム運びを見て、昔のテンポがもどってきたような感じを受けました。

展示最後の「他のマンガ家が描いたラムちゃん」(My Lum)は、銀座松屋では狭いスペースでの掲示だったので、コメントまで読んでいると混雑してしまうためゆっくり見られなかったのですが、北九州ではゆったりとスペースがとってあってとても快適でした。

で、9/6はワークショップとして「ぬり絵体験」コーナーがあったのですが、これがとても楽しい! そりゃ、これだけカラフルで魅力的なカラー原画を見て、他のマンガ家の「ラムちゃんを見て自分もマンガを描こうと…」というコメントを聞いて、それでぬり絵コーナーがあればやるしかないでしょう! コーナーではサンデーコミックス版の単行本の見本があって参照できるんですが、原作はラムちゃんの髪などのカラーリングが一定じゃないので、自分なりに色のアレンジを工夫する楽しみもあります。

スタンプラリーは時間がなくてできませんでしたが(それでも2つは押した)、楽しそうにスタンプを押して歩く家族連れを見ました。ポケモンで知っていましたが、スタンプラリーの人気も鉄板ですね。展示に感動したあと、ぬり絵で実体験ができて、スタンプラリーをしながらショッピングモールを歩くという、体験学習と地域貢献を組み込んだ企画はなかなかよかったです。意図はともかく、なにより楽しい。「高橋留美子展」の価値が上がる企画でした。

会場から臨む小倉城をバックに。全部は塗れませんでしたが、色を考えながら色えんぴつを選んでいるだけで楽しい。

学生ボランティアによるぬり絵ワークショップは、9/12(土)と9/13(日)までとのことです。北九州だけの限定企画ですので、是非体験してみてください(スタンプラリーは19日(土)、20日(日:最終日)まで)。


おまけ 展示を見た東浩紀氏の「うる星」ファントーク

http://www.youtube.com/watch?v=15Jit_vuc8I
http://www.youtube.com/watch?v=Tq-C7sosaqw
# by ka-kaname | 2009-09-11 02:34 | オタクな話題
小学館の大英断「コロコロコミック アーカイブズ」「藤子・F・不二雄大全集」発刊
今週、たてつづけにうれしいニュースがありました。

コロコロコミック アーカイブズ
http://www.comicpark.net/corocoro/

藤子・F・不二雄大全集
http://www.shogakukan.co.jp/fzenshu/

「コロコロコミック アーカイブズ」は、すでにgigagineITmediaInternetWatchなどでも紹介されてますが、「コロコロコミック(てんとう虫コミックス)」の旧作をオンデマンドコミックスで順次復刊するといううれしいニュースです。

すでに、「ゲームセンターあらし 全17巻」「てんとう虫の歌 全4巻」「がんばれ! ドンベ 全2巻」「金メダルマン 全4巻」「ゴリポン君 全3巻」「うわさの姫子 全31巻」「おはよう姫子 全8巻」が発売されています。

4月以降、「おじゃまユーレイくん」「超人キンタマン」 「名たんていカゲマン」など順次刊行されるようで、楽しみです。

そして、さらなるビッグニュース! 「藤子・F・不二雄大全集」は7月から刊行、第1期収録作品には、復刊が難しいとされていた「オバケのQ太郎」「海の王子」から、「ドラえもん」「パーマン」「キテレツ大百科」「エスパー魔美」といった人気作品まで予定されています。しかも、単行本未収録作品の追加も予告されるという「完全版」志向宣言まで。


あまり知られていませんが、小学館のコミックスは、サンデーやビッグコミック、少コミなどの「コミック編集局」扱いと、コロコロコミックや学年誌の「児童・学習編集局」扱いで大きく分かれていて、刊行計画については上層部レベルでポリシーが異なります(下世話な話を言えば、帝国ホテルで行われる小学館コミック編集局の忘年会には、コロコロコミックは含まれていません。予算の出所が違うので当然といえば当然)。

これまで、「コミック編集局」扱いの作品については、オンデマンドコミックスだけでなく、電子配信「ソク読み」などで(主に電子化による)アーカイブ化が進んできましたが、「児童・学習編集局」扱いの作品はあまり進んでいませんでした(「小学館クリエイティブ」が復刊をしていますが、これはもっともっと別の組織です)。

しかし、2007年からの「コロコロ伝説」シリーズの刊行からはじまり、今回の「コロコロコミックアーカイブズ」「藤子・F・不二雄大全集」といった企画が進んでいることから、「児童・学習編集局」にもやっと、アーカイブ化の流れが波及してきたといえるでしょう。
# by ka-kaname | 2009-03-07 10:49 | 古いマンガ
大阪府立国際児童文学館は「やればできる子」
橋下府知事の意向で、「大阪府立国際児童文学館」が「いらないハコもの」と判断され、統廃合を前提に検討が進んでいるようです。

ミヤモさんのblog
http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/20080325

僕も去年、ミヤモさん企画の展示・トークショーに行ってとても楽しい時間をすごし、閲覧コーナーでは「少年サンデー」の創刊号を読ませていただいたので、何か存続に協力できないかと考えました。

閉鎖の反対署名もしましたが、都民である僕は、「閉鎖反対!」というノリとは別に、「児童文学館がなくなったら大阪にお金が落ちないぞ」という意見を知事あてに書いてみました。

知事あてのメールフォーム
http://www.pref.osaka.jp/j_message/teigen/tijifmt.html
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東京都在住の○○と申します。

大阪府立国際児童文学館が、現状での存続が危ぶまれていると聞き、府民ではない立場ですが利用者の意見としてメールいたしました。

僕は昨年、児童文学館の「再発見!『講談社の絵本』の漫画世界」という展示企画とイベントを拝見しました。企画は非常におもしろく刺激的でしたが、それだけでなく、児童文学館自体のユニークさにも魅かれたのです。

・担当職員の方が専門知識が広く、非常に頼もしい
・サービスもお役所的でなく、快適で満足度が高い
・いわゆる「貴重な」資料だけでなく、児童に関するもの全般を広く見聞することができる
・「太陽の塔の下で古い資料を閲覧する」というロケーションがすばらしく、タイムトリップ感がある

僕は東京から新幹線に乗り、大阪市のホテルを予約し、二日連続で児童文学館に訪れ、千里中央でお好み焼きを食べて、大満足で帰京しました。もし、児童文学間が中央図書館に統合されるとしたら、上記の魅力は全くなくなってしまい、大阪に訪れることも少なくなるでしょう。

他に類を見ない児童文学館の持つポテンシャルの高さは、いろいろなアイデアを実現し、大阪を活性化させうるものだと考えています。大阪にお金が落ちる仕組みを考えるためにも、早急な結論は控えたほうがよいと思います。

世界に誇れる児童文学館が、大阪に幸福をもたらす施設となるよう、議論が深まることを期待しています。
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大阪府が危機的状況にあるのは間違いなく、おそらく府知事は「管財人」として、文化がどうとかいってる場合ではないという立場なのでしょう。僕が同じ立場だったらそう行動するかもしれません。なので、僕は「金を産むかもしれないのにもったいない」という意見にしてみました(といっても即効的な具体案があるかといえば難しいですが)。


僕は、アーカイブ事業や研究などが、それ自体である程度は経済的に自立する(もしく支援団体・地域に経済的な豊かさをもたらす)ことを目標とすべきと考えています。もちろん理想論ですけども、常にそうした意識を持つことは重要で、「児童文学館」にはその意気込みが感じられるのです。

その意味で「児童文学館」は「やればできる子」です。全国の「やればできる子」にエールを送る意味でも、「児童文学館」にチャンスを与えてあげたいです。

そうだ、どなたか「児童文学館」を「やればできる子キャラ」にして描いてみませんか? 太陽の塔の肩にちょこんと座った女の子なんてどうでしょう。「子供が笑う」を目標にしている府知事なら、そのニュアンスがわかってもらえるかもしれません。
# by ka-kaname | 2008-04-06 05:13 | マンガの研究
バレンタインを吹き飛ばせ!「神聖モテモテ王国」復刊
90年代後半の「少年サンデー」でナンセンスなギャグを展開し、隠れた人気で支持されながらも突然の終了、単行本も早々に絶版という悲劇の作品、ながいけん「神聖モテモテ王国」がコミックパークで復刊されました。

http://www.comicpark.net/cm/comc/detail-bnew.asp?content_id=COMC_ASG01034

バレンタインの今こそ、「神聖モテモテ王国」建国を!!
試し読みもできます。

少年サンデーコミクッス版の5~6巻は入手困難で、プレミア価格として数千円の値段がついていることもあります。手に入れられなかった人は是非。

Wikipediaの記述によれば、単行本未収録エピソードがかなりある様子。コミックパークはボンボンの「海の大陸NOA」の未収録集を出したこともあるので、1~6巻の売れ行きによっては未収録版の刊行の可能性もあるでしょう。


なお、今発売中の「ダヴインチ」で、あずまきよひこの特集があり、そこであずまきよひこオススメとして「バガボンド」「のだめカンタービレ」と並んで「神聖モテモテ王国」がピックアップされています。
参考:Room 1515
http://blog.so-net.ne.jp/shinopy/2008-02-08

90年代の伝説のギャグマンガ、是非読んでみる価値ありです。
# by ka-kaname | 2008-02-12 00:56 | 今のマンガ
新作落語「同人誌作家」(道具屋・改)
ずいぶん更新していないので、去年つくった落語の改作を掲載します。

・有名なネタ「道具屋」のパロディで、元ネタを知ってると楽しいですが、知らなくてもたぶん大丈夫です。
・唐沢俊一氏の2007/6/29の日記の最後のほうにインスパイヤされました。
 http://www.tobunken.com/diary/diary20070629101329.html

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「おい、与太郎」
「なんだい伯父ちゃん」
「相変わらずおまえは家でゴロゴロしてやがる……今はやりのニートってぇやつか。もういい年なんだから、商売でもはじめたらどうだ。かあちゃんも心配してるんだぞ。どうだ、ひとつ伯父さんが裏でやってる商売をやってみねえか」
「ないしょでやってる商売…? ああ、だれも知らないと思っていても、ないしょといえばすぐわかる。あれでしょ、頭に『ど』のつく商売でしょ」
「ああ、確かに『ど』がつくな」
「やっぱりあたった。伯父さん童貞だな!! マジ童貞? キモーイ☆キャハハ彡」
「どどどど童貞ちゃうわ! というか童貞は商売じゃないだろ! ったく、伯父さんは『同人誌作家』だ」
「ああ、キモーイじゃなくて、『きんもーっ☆』の方か」
「そういうことを言うんじゃないよ。これでもあたれば儲かるんだから……。いいか、夏コミのブースがとれてるから、明日の三日目に店番してこい」
「ブースって…新刊はあるの?」
「ああ、ここに新刊とつり銭が入ってるから」
「これが新刊……なにこの『おしっ娘倶楽部 CCレモン』って本。スカトロ? 伯父さん趣味がわるいや」
「うるさいよ。あと見せものとしてこのフィギュアをもっていきな。首んとこから魔改造してあって抜けやすいから気をつけてな。あと、おまえの持ってるいらない同人誌もいっしょに売っちまえ。じゃ、チケット渡しとくから」
「はいよ、行ってきます」


「いやー、ほんとオタク第一世代ってのはいろいろとうるさいね。冗談で童貞って言ったら顔真っ赤にしてたっけ。そのうち天使になるんじゃないのかねぇ…。
おいおい、ビッグサイトに着いたのはいいけど人が多いねどうも。同人誌なんて買う奴がいるから作る奴がいるのか、それとも作る奴がいるから買う奴がいるのか、どっちにしたって間の悪い奴はあいだに入って売り子なんてやることになっちまう…。えーと西館……あぁ、ここだここだ。(隣に)どうもおはようございます」
「ああ、どうも。いつもの方じゃないね。はじめてかい? まず机のチラシを片付けて敷物を広げるんだよ。あとは売りものを出しておけばいい」
「すみませんね、いろいろ教えてもらって…。おお、始まった始まった。周りが拍手してくれてるねぇ。みんなありがとうッ!」
「おまえさん立ち上がって礼しちゃいけない。これは始まりの儀式だよ」
「なんだそうですか。恥かいちまった。えー、できたての同人誌、ほやほやの同人誌……」
「あれ、おかしなブースがあるな。ちょっと見せてください」
「へい、いらっしゃい! お二階へご案内ィ!」
「おいおい上へあがったらコスプレ広場に出ちまうよ。そのグレラガの同人誌見せてくれ」
「グレ×ラガって、ウチはやおいは扱ってないんで…。ああ、グレンラガン。ウンを粗末にしちゃいけねぇ」
「何いってやがる。あれ、表紙に丸く黄色い箔押しがしてあるよ。普通箔押しってのは金色じゃないのかね…。うまく金が乗らなかったのかな」
「ああ、おとといそれでオナニーしたときにしぶきが飛んだんで…」
「バカ! ひでえものを売るねぇ!!」
「あっはっは。あの客カンカンになっていっちまった」
「おいおいおまえさん、だめだよそんなもの出しちゃ。となりのこっちまで変な目で見られちまうじゃないか。小便されないようにしなきゃ」
「小便される?」
「買わずに行くやつを小便というんだ。しっかりしなくちゃいけないよ」

「はいごめんね。エログロでなにか珍しいものない?」
「ああ、変わったお客さんが来たよ。はいはい今日の新刊は『おしっ娘倶楽部 CCレモン』ってぇやつで、変態のアナタにピッタリ……。でもお客さん、小便はナシですよ」
「えっ、この本小便ないの? あぶなく表紙にだまされるところだったよ。それじゃ」
「おーい、ちょっと! アバタ面のおっさん! ちがうちがう……っていっちゃったよ。忙しい人だねどうも。でもあの人どっかで似顔絵を見たような……」

「そのカラーのコピー本見せてください」
「ああ、いらっしゃい。これね。カラフルでいいでしょ」
「ヌけるエロ同人を探してるンですが、私はスカトロは駄目なんで……。このコピー本かわいい女の子が多いね。でもイラストばっかで、脱いでるものがないよ。萌えキャラなら着衣でもまぁいいんだが、どうもこれはヌけないね」
「がんばってヌいてみてくださいよ。セーノで皮をひっぱって……よかったら手伝いますよ」
「冗談いっちゃいけない。一人でやりますよ」
「うーんでも、そりゃヌけないわけですよ」
「うーん、なぜだ?」
「印刷所のチラシを綴じたものですから」
「おいおい、チラシと知っててヌかせようとするやつがあるか」
「オフセットの料金表でヌけたらすごいことだと思って」
「なにをバカなことを言ってるんだ。もっとすぐにヌけるものはないのか」
「ありますよ」
「んじゃ出してくれよ。ものは何だ?」
「フィギュアの首が抜けます」

m(_ _)m

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「道具屋」のオチはいろんなパターンがありますが、そのうちの「お雛様の首が抜けます」を採用しました。あと米沢さんに特別出演していただきました。僕が売り子で応対したときもこんな感じだったので。(同人誌の古売は会場では禁止されています。念為)
# by ka-kaname | 2008-01-18 02:57 | オタクな話題
「ツヤベタ」表現に隠された罠……「げんしけん」にて
オタ業界でないとちょっとわかりにくいネタをひとつ。

先日、オタ業界では有名な「げんしけん」(木尾士目)をちょびっと読み返したら、恐ろしいことに気づいてしまった。

オタサークルの日常を描いたこの作品に、コスプレイヤーをやってる大野さんというグラマーな女性キャラがレギュラーで登場する(一応断っておくと、オタサークルのなかにこういう身体的に高スペックな女性は意外といるのである)。で、驚いたのは、この大野登場から第4巻まで、彼女はコスプレをしているとき以外、彼女の「黒髪」にほとんどツヤベタ処理がされていなかったのだ(カラーページ除く)。

参考 (萌えプレ 画像も借りました)
http://blog.livedoor.jp/moepre/archives/50090667.html
ツヤベタの種類 (「ぬくぬくうさぎEX」内)
http://fumi08.web.fc2.com/tb_ls.html

マンガを描く人ならわかると思うが、黒髪はツヤベタ処理をすることで活きる。黒目にハイライトを入れるように、髪に光源を反映した規則的な白を入れることで、立体的になったり、みずみずしさが出たりするのである。現代マンガにおいて、長髪キャラにはほぼツヤベタ必須と言っていいだろう。

しかし、大野にはまったくといっていいほどツヤベタがない。「髪」に関するセリフのやりとりもあったりして、大野にとって重要なパーソナリティのひとつであるはずなのだが、あまりに描写がぞんざいなのだ。オタサークル「げんしけん」のムサイ男、斑目や田中にもツヤベタや髪の立体表現があるのにである。

ところが、第4巻から状況は一変する。大野と田中がつきあっていることが判明する回から、なんと毎回大野にツヤベタが発生するのだ。

……これは、あきらかに意図的にやっている。そう、大野は男ができてはじめて、髪をトリートメントするようになったのだ。

もっとはっきりと言えば、当初、木尾士目は大野を「長い髪をロクに手入れをしないキモ女」として描いているのである。読者(特に男性!)は彼女のおっぱいにばかり目が行くのでスルーしてしまうところだ。

そういえば、2巻93Pには、仲間の春日部が行きつけの美容院を紹介しようとするも大野から「いや~~そうゆう所慣れてないんで」と断られるシーンもあった。大野は美容院には行かない。でもコスプレのときはバッチリ髪に手を入れるのだ。このあたりの扱いの差に、「汚部屋はみっとないが、人に手を入れられるのはイヤ」というような、自分の聖域に他人が触れて欲しくないというオタク心理の表れがあるのだろう。そして、その心理の変化が「ツヤベタ(の有無)」という表現に隠されていたのである。

4巻で、主人公の笹原は、大野と田中が2人で秋葉原にいるところに遭遇し、はじめて2人がつきあっているらしいことに気づく。これは物語のレベルでは「秋葉原デートの現場」を目撃したことなのだが、表現のレベルで読者がここで目撃したものは、「ツヤベタのある大野さん」なのだ。ここでは、読者に意識されるかされないかギリギリのところで、大野が田中に好意を持ち、髪の手入れをしはじめたことに気づく仕掛けになっている。

「眉毛は手入れしないが、髪の毛ぐらいは手入れするようになった」という微妙なオタクの成長(?)を、「ツヤベタ」を逆手にとり、かつおっぱいのミスディレクション(視線の誤誘導)も利用してやわらかく表現した木尾士目はすごい。

「げんしけん」では、オタク全体のキモ部分を、木尾士目は揶揄するでもなくシニカルに突き放すでもなく、深い愛情をもって描写している。このことは何度も本作を読んでわかっていたはずだが、今回この点に気づいて、さらに感動してしまった。まだまだ、隠された描写がこの作品にはあるはずである。
# by ka-kaname | 2007-06-05 02:57 | オタクな話題
速報 手塚番の暴露話(岡田史子のデビュー秘話あり)
2chに元手塚番という方がいらっしゃってまして、僕を含めて何人かでちょっとたきつけてみたところ、昨日こんなページが公開されました(文章を書いたのは去年末だそうです)。

手塚番千夜一夜
http://w4.alpha-web.ne.jp/~tanet/

ありがとうございまーす。必見の内容ばかりですよ!

光臨スレ
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/rcomic/1166360714/l50

# by ka-kaname | 2007-03-28 00:12 | マンガの研究
謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影
謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影を購入してザッと目を通しました。

いや、これ面白いです。酒井七馬は「新宝島」の原作者として手塚治虫とともにマンガ史に名を残したが、その後不遇なとなりさびしい末路を迎えた……と語られるのみの人でしたが、取材を読み進めて行くと、酒井七馬には戦前・戦後のマンガ史や紙芝居を含めた演芸史が大きく関係していることがわかり、一緒に謎解きをしているような気持ちになります。

著者の中野さんとは何度が立ち話をさせていただいたことがありますが、僕がこの本を読んでいて思い浮かべたのは、「パトレイバー」に出てくる松井警部です。汗をふきふき、地道な聞き込み取材をされている姿を想像してしまいました。それはともかく、この本は中野さんが「手塚治虫と路地裏のマンガたち」や「マンガ産業論」などで見せた手腕の集大成的なものに仕上がっており、すばらしい著作であります。
# by ka-kaname | 2007-02-28 02:02 | マンガの研究
コミケ元代表、米沢さんの告別式

米沢元コミケ代表の告別式に向かうため、久しぶりの喪服を着て麻布十番へ。会場に着くとすでにかなりの数の参列者が。記帳をすませて焼香の列に並ぶ。コミケスタッフによる人の誘導ノウハウのすばらしさに改めて感動する。

しばらくすると読経の声が聞こえてくる。隣の人数人がコミケスタッフ(現役?)だった人らしく、当時の思い出話をずっとしている。ゆっくり小声ならいいのだが、早口のオタクしゃべりでだんだん声が大きくなってきた。「もうちょっとお静かに」と軽く注意すると「すみません」とおとなしくなった。落ち着かないんだろうな、と心中を察する。僕もそういう状況だったら、悪気はなくてもペラペラとしゃべってしまうかもしれない。

焼香までの長い間、ぼんやりと米沢さんのことについて考えていた。

僕はコミケに売り子で参加しているだけて米沢さんと特につながりはない。でも、この告別式には出たかった。僕は米沢さんを「オタクをまとめるリーダー」として尊敬しているからだ。そして、そのリーダーがいなくなったとき、仲間や影響下にあった人がリーダーをどう評価し、どう行動するのかということも知りたかったからだ。

学生時代の体験ではあるけれど、大学漫研で委員長をやっていてオタを動かす大変さを実感しているし、大学祭実行委員会に長く参加してイベント運営の困難さも体験している。そうした観点から、米沢さんにはシンパシーを感じる部分が少なくないのだ。

人を、特にオタを動かす「リーダー」はどうあるべきか。米沢さんには、その答えの一つがあった。飄々としたキャラであるがいろいろなものを受け入れる包容力がある、運営におけるさまざまな困難も理念を大事にしつつ対応をしていく……こんな内容を彼を知る複数の人から聞いている。僕がそうなれるかはともかく、是非とも米沢さんから学んでおきたいと思っていたことだった。



読経のあと列が動き、焼香する番となった。普段着でにこやかな笑顔の米沢さんの遺影。僕の中の少ない米沢さんの思い出も笑顔ばかりだ。この笑顔にみんなついていったんだなぁと思うと、込み上げてくるものがあった。

焼香が終わって建物から出ると、マンガ学会や研究者関連の方たちがいたのでそこへ合流させてもらう。斎場前には、出棺を見送ろうと多くの人たちが並んでいる。研究者関連の方と一緒に流れていたら、けっこう前のいい位置(霊柩車前)に並んでしまって恐縮する。

斎場の建物から棺が運ばれ霊柩車へ。その間「マツケンサンバ」の替え歌「米やんサンバ」が流れ、皆は鼻をすすりながら笑っている。棺が車に収められ、喪主の英子さん(奥さん)がマイクを持ち挨拶。それによれば、7月はじめに肺ガンを宣告され、その足で新潟のマンガ学会に参加し3日3晩酒を飲み、翌週もSF大会に参加して3日3晩酒を飲み、その後は入院先からコミケ集会や会場運営に参加し……とのことだった。もしかすると、米沢さんは余命を知っていて、あえて皆と会えるイベントに無理を押して出ていたのかもしれない。それもたぶん、米沢さんらしいのだろう。

挨拶が終わり、棺を乗せた霊柩車がクラクションを鳴らして斎場の外へ。「米やんサンバ」が流れる中、参列者が「米やんありがとう!」「おつかれさまでした!」と掛け声がかかり、合掌から拍手でお見送り。こんな葬儀も珍しい。

僕は霊柩車を追うように参道に走って出てみた。参道には参列者がずらっと並び(焼香のときより増えている)、「ありがとう!」「おつかれさま!」の声がウェーブのように続く。

霊柩車が見えなくなると、「葬儀は終了しました! おつかれさまでした!」のアナウンスがあり、再度拍手に。「米沢イベント」はこれで終了したのである。参列者の顔を見ていると、決して暗くなく、どこか晴れ晴れとした顔だった。そして呆然とする参列者を、スタッフが「こちらへ移動してくださーい」「車通りまーす」と誘導し、数千人の足が動いた。それは感動的な光景だった。


僕はそのまま地下鉄に乗り、一人で帰途に着いた。あらためてジーンと来て電車の中で泣いてしまった。これは悲しい涙ではなく、こんなにも参加者に愛され、有能なスタッフを残した米沢さんが誇らしく、うれしくて泣いてしまったのだ。もちろん、僕はコミケ内部のことは知らないし、今後の運営が楽なものではないことは想像に難くない。ただ、このようにオタに愛された人が「いた」ことが実感できて、胸がいっぱいになった。米沢さんありがとう。今後も「参加者」としてコミケに関わっていこうと思う。


写真は2chであがっていた当日の写真と色紙。色紙は関係が深かったDr.モロー氏による。

22:15~NHKの米沢氏追悼映像(いい映像です)
http://www.youtube.com/watch?v=gNrDW7qsP7k

コメントつきバージョン
http://www.youtube.com/watch?v=x-u1Iw4VNZw

メモ:米やんサンバの歌詞(2chより)

鳴らせブーイング 響けバッシング 今年生誕ん周年
誰も彼も 浮かれ騒ぐ 今日はよねやん誕生日

少しタレ目 いつも笑顔 だけどそれは表の顔
意外や意外 実は短気な 内弁慶な照れ屋さん
オーレオレ よねやんサンバ
オーレオレ よねやんサンバ
あぁ にんじんキライ タバコ大好き
眠りさえ忘れてしまう夜釣りしよう
サンバ ビバ サンバ
よ・ね・や・ん サンバ オレ!

会社社長 コミケ代表 古物商の資格もある
まんが評論家 著書もあるよ だけど実はただのオタク

のらりくらり 言い訳して 言葉巧みに逃げる人
何か起きれば『予測してたよ』それじゃなんとかしておけよ!!
オーレオレ よねやんサンバ
オーレオレ よねやんサンバ
あぁ お酒大好き 歯医者は苦手
眠りさえ忘れて酒盛りしよう
サンバ ビバ サンバ
よ・ね・や・ん サンバ オレ!
オレ!!
# by ka-kaname | 2006-10-08 18:11 | オタクな話題
ハレンチ学園のモデル校で有罪判決
都立板橋高の卒業式「妨害」、元教諭に罰金刑 東京地裁
http://www.asahi.com/national/update/0530/TKY200605300124.html

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 定年まで勤務していた東京都立板橋高校の04年の卒業式に来賓として訪れた際、開式前に保護者らに国歌斉唱時に起立しないよう呼びかけたなどとして、同校元教諭・藤田勝久被告(65)が威力業務妨害罪で在宅起訴された刑事裁判で、東京地裁は30日、無罪主張を退け、罰金20万円(求刑・懲役8カ月)の判決を言い渡した。村瀬均裁判長は「式の遂行は現実に妨害された」として威力業務妨害罪の成立を認めた。一方で「元教諭に対する非難は免れないが、元教諭は式の妨害を直接の目的としたのではなく、式もほぼ支障なく実施された」と述べ、懲役刑ではなく罰金刑が相当だと結論づけた。元教諭側は即日控訴した。

 判決によると、藤田元教諭は04年3月11日午前9時42分ごろから午前9時45分ごろまでの間、板橋高校体育館で、午前10時開式予定の卒業式のために着席中の保護者に向かい、「今日は異常な卒業式」と訴え「国歌斉唱のときは、できたらご着席をお願いします」などと大声で呼びかけ、教頭が制止すると「触るんじゃないよ」などと怒号をあげた。校長が退場を求めても従わず、式典会場を喧噪(けんそう)に陥れ、開式を約2分遅らせるなどした。

 元教諭の退出後に卒業生が入場。今回の裁判の対象になった元教諭の式場での行為と直接の因果関係はないが、冒頭の国歌斉唱時に卒業生の約9割が着席する事態が起きた。これを問題視した都教委などが被害届を出したのを受け、東京地検が異例の在宅起訴に踏み切っていた。

 判決は、呼びかけの内容が学校側にすれば許容できない内容で、校長らが職責上放置できないものだから「威力」にあたる▽退場要求に従わず怒号し、校長らが対応を余儀なくされた――などとして威力業務妨害罪が成立すると判断した。

 弁護側は「配布や呼びかけは私語が許されている時間帯で、教頭からの制止も受けていない」と争ったが、判決はこれを退けた。

 元教諭は、教員生活最後の年に受け持った1年生の卒業を見届けるために来賓として来ていた。
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都立板橋高校」という学校名でピンと来た人はマンガ通でしょう。都立板橋高校は「ハレンチ学園」(1968~)のモデルになった学校で、マルゴシ先生などは実在のモデルがたくさんいたということでした(永井豪の出身校というつながり)。

そしてもうひとつ、板橋高校はあの「究極超人あ~る」(1985~)のモデル校でもあるのです。板橋高校には「光画部」があり、鳥坂先輩やあ~るのモデルとなった人が実際に通っていたそうです(たわば先輩のモデルとまとあきの出身校というつながり)。

これらの作品から察するに、板橋高校は自由な校風だったのでしょう。有罪とされた先生も、もしかすると、年齢的にこれらの作品に影響を与えた人物なのかもしれません。

僕はこれらの件について学校側に同情する部分もあり、どちらの側を批判するつもりはありません。ただ、裁判という形で学校が記録に残るより、これらの作品のモデル校として記録に残るほうが名誉ではないかなぁ、と思う次第です。
# by ka-kaname | 2006-06-01 14:15 | オタクな話題
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